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「夜間頻尿」について

夜間頻尿(1)

 国際禁制学会によれば、夜間頻尿とは"夜間就寝中に1回以上排尿に起きる"状態と定義されています。
 夜間頻尿は男女を問わず排尿に関して最も日常生活に影響を与える症状であり、この原因を解明しコントロールしていく必要があります。
 かつて泌尿器科医は夜間頻尿を前立腺肥大症や膀胱機能の面だけから捉えがちでしたが、最近は夜間多尿・夜間膀胱容量の低下・睡眠障害の三大要因があり、これに心疾患・内分泌環境・下部尿路疾患がさまざまな影響を及ぼして夜間頻尿を発生させていると理解されています。したがって夜間頻尿の治療に対しては、夜間多尿が原因であれば夜間の尿量を減らす必要があり、膀胱容量が低下している場合は膀胱の刺激を抑えたり膀胱容量を増やすことが効果的であり、また睡眠障害の方には安定した睡眠が得られるようにするのが望ましいと言えます。
 夜間頻尿は、年齢とともに増加するため加齢現象の一つとも言われ治療にも反応しにくいのですが、その原因をはっきりさせることで改善も期待できます。

夜間頻尿(2)

 夜間頻尿の原因の一つに夜間多尿という状態があります。夜間多尿とは"夜間の尿量が一日尿量の20(若年者)~33(高齢者)%以上"と定義されています。一日尿量が1000~1500mlとすると夜間に300~400ml以上あると夜間多尿となります。
 夜間多尿はさまざまな病状から発生しますが、その一つが抗利尿ホルモン(尿量を少なくさせるホルモン)の分泌異常です。抗利尿ホルモンは、通常睡眠時に多く分泌されて夜間の尿量を調節しています。若いころのようにグッスリと眠れている時は抗利尿ホルモンが働いて夜にオシッコに起きることはあまりないのですが、年齢と共に増えます。抗利尿ホルモンが分泌される部位(下垂体)に梗塞や腫瘍などの障害がなければ、昼間の適度な運動(散歩など)や睡眠薬の服用などで安定した睡眠を確保することで、抗利尿ホルモンの分泌が回復し夜間尿量は少なくなります。明らかな抗利尿ホルモンの分泌低下がある場合は、寝る前にホルモン剤の点鼻(スプレー)をすることで、就寝中の尿量を抑えることが出来ます。

夜間頻尿(3)

 一般的に心不全が進行すると十分な尿量が得られず多尿となることは少ないのですが、夜間の多尿は心不全の早期から認められる特徴的な症状です。心臓はポンプの働きをしていて、立っている時は身長分の高さまで血液を送っていますが、寝ているときはせいぜい20~30cmの高さしか血液を送らなくてよくなります。心臓が丈夫なうちは立位でも肝臓に十分な血液が流れ込みますが、心不全になると、腎臓の血流が少なくなり尿があり作られません。一方で夜間寝た状態では、腎血流量が回復し尿量も増え、このことによって、昼間に生じた軽度のうっ血状態や浮腫が改善され心臓の負荷も軽減されています。
 近年、心不全の診断・治療にナトリウム利尿ペプチドが重要視されており、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心不全評価の指標となっており、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は心不全の治療薬として広く使われています。
 夜間の尿量が昼に比べて多いと感じるときは、内科で心臓の検査をして心不全の治療をすることで改善することがあります。