「骨盤臓器脱」について

骨盤臓器脱(1)

骨盤臓器脱についてお話します。

以前にお話した膀胱瘤もその一つです。その際にも少し説明しましたが、骨盤底の筋肉や靭帯の衰えによって内臓を支えきれなくなり、膣を介して外側へ脱出している状態のことを言います。脱出する臓器は、膀胱、子宮、直腸、小腸などがあり子宮摘出後もその断端が脱出する場合もあります。一般的に出産の経験がある方に多く、高齢になるほど増悪する傾向があります。症状は脱出する部分によってさまざまで、排尿障害や排便障害、会陰部の違和感、摩擦による膣壁のびらんや出血がですが、命にかかわるような大きな障害では無いので放置されている場合もあります。しかし患者さん本人にとってみれば悩みの種であることも多いようです。

治療は比較的楽な治療として膣内にリングを挿入する方法があります。ただ、基本的にはリングを外すと元の戻るため定期的な交換が必要で、長期に使用すると膣のびらんや感染、ひどくなると膣の粘膜に食い込んでしまい外す事ができなくなることもあるため注意が必要です。

骨盤臓器脱(2)

骨盤臓器脱の治療についてお話します。

治療の一つとして膣内リングを紹介しましたが、今回は手術による治療について紹介します。骨盤臓器脱の手術は主に腹部を切開して行う方法(開腹手術)と膣から行う方法(径膣手術)とがあり、それぞれに特長があります。開腹手術は脱出した膣を骨盤の硬い組織(靭帯)に直接縫合して固定する方法です。臓器脱の修復が確実に行え、再発率も低いという利点がありますが、腹部を切開しなければならないため身体に与える影響が強いという欠点があります。径膣的な手術は、従来行われている方法では膣の壁を縫い縮めて修復をし、子宮が脱出している場合は子宮を摘出します。比較的身体に与える影響が少ないのですが、再発率がやや高いという欠点があります。骨盤臓器脱は生命に影響のない疾患で開腹手術では侵襲が大きく、径膣手術では再発率が高いということで従来は積極的に手術を行う施設は少なかったのですが、最近はメッシュを用いた径膣手術で、膀胱・子宮・直腸全ての脱出が修復可能な新しい手術法が開発されました。次はそのお話をします。

骨盤臓器脱(3)

骨盤臓器脱の手術は複数の科で治療が必要となる場合があり、治療が煩雑になるとお話しました。しかし最近では、メッシュ状の合成繊維を使用した手術が行われるようになりました。これは一つの科で(主に泌尿器科、一部婦人科)治療が可能であり、再発率も低い治療です。また子宮の脱出がある場合でも、基本的には子宮の摘出が必要ないという利点もあります。手術は膀胱が脱出している膣の前壁(腹側)に、直腸が脱出している場合は後壁(背側)に合成繊維を挿入して臓器を支えます。膀胱が出ている人は直腸も出ている事が多いため、両側に行われることがあります。また子宮が脱出している場合にも両側に挿入します。合成繊維は身体にとっては異物ですので、炎症や感染を起こす可能性があるという欠点がありますが、発生率は5%以下といわれそれ程多くありません。治療の成功率は95%以上と言われています。当院ではこの治療を行っていますが、今のところこの治療を行っている施設は少なく、どこでもできる治療ではありません。

CUクリニック 多田 勝

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